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2015年04月24日

『こめかみっ! −ライス・イズ・ビューティフル−』来月発売です

 ブログ読者の皆様こんにちは。稲葉洋樹です。

 以前からしつこいくらい告知していますが、5月11日以降(もしかするともう少し後かもしれませんが)に、創芸社クリスタルブックス様から新刊が発売されます。既にネットでは予約も始まっていますね。イラストは漫画家の瀬口たかひろ先生が担当されています。

komekami1.jpg


 こちらの可愛らしい表紙が目印です。公式サイトのイラストとは少し雰囲気が変わりましたが、こちらも素晴らしい出来栄え……。なお、表紙を飾っているのはメインヒロインの越野ひかりちゃんですね。毎日おにぎりを握って欲しい感じの家庭的な女の子です。他にも可愛いヒロインがたくさん登場しますので、どうぞご期待ください。

 それでは、本日はこの辺りで。5月10日には福岡で発売イベントもやりますよ〜。

                                      稲葉洋樹

こめかみっ!−ライス・イズ・ビューティフル− (創芸社クリスタルブックス) -
こめかみっ!−ライス・イズ・ビューティフル− (創芸社クリスタルブックス) -


posted by 稲葉洋樹 at 22:14| Comment(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月20日

いもうとコンプレックス! 〜とある休日の一幕(前編)〜

*この作品はブログ主のデビュー作『いもうとコンプレックス!』の短編です。時系列的には一巻よりもさらに前の話になっています。

 暗闇の中を、二つの影が蠢いていた。
 足音を忍ばせ、気配を断ち、二つの影は周囲の闇と完全なる一体化を果たす。
 闇と同化した彼らの存在が認識されることはない。それゆえ、闇の中で行われる彼らの所業を知る者もまた、存在しないのであった。
「それで、例のブツは?」
 影のうちの一方が、闇に溶け込むような低い声で呟く。
「こちらに。付属のDVDは袋とじしてあります」
 影の他方の声も、同じく闇に溶けて消えた。
「うむ、確かに。しかし越後屋。お主も悪よのぅ……」
「いやいや、お代官様ほどでは……」
 悪役の古典的なやり取りを交わしながら、二つの影は小さく肩を震わせて笑い合う。
 こうして、今日も闇の中での悪事が続いていく――かに思われたその瞬間。

「一体何してるの!? お兄ちゃん、お父さん!」

 天から降り注いだ真っ白な光が闇を引き裂き、全ての悪事を白日のもとにさらす。
 部屋の電球を灯し、出入り口の前で仁王立ちしていたのは、
「「か、佳奈美っ!?」」
 早川家のしっかり者の長女、佳奈美であった。
「二人とも、一体何してたの!?」
 佳奈美が再度、同じ質問をする。
「い、いや、親子のさわやかな朝の挨拶を……なぁ、大吾?」
「そ、そう。さわやかな朝の挨拶だ」
「どうして朝のさわやかな挨拶が電気を消した真っ暗な部屋の隅っこで行われるの!?」
 部屋の隅で背中を向けて小さくなっている兄と父親に、佳奈美は全力でツッコミを入れた。
「いや、それには海よりも谷よりも深い理由があってだな……なぁ、大吾?」
「その通り。空よりも山よりも高い理由があるんだ」
「高い理由って何!? って、それはひとまず置いておいて。それよりも、お父さんが持ってるそれは何?」
 そう言って、佳奈美が父親――早川真哉が手にしている分厚い書類を指差す。
「っ!? い、いや、これは仕事の書類だ。佳奈美とはなんの関係もない」
 すると、真哉は慌てた様子でそれを後ろ手に隠した。
「……じゃあ、どうして隠すの?」
 佳奈美が疑いのこもった視線を向ける。
「べ、別に隠してなんていないぞ? 今日は後ろ手に書類を持つと幸運が訪れると朝の占いに出ていたんだ。それと、今日のラッキーアイテムは分厚い書類だった」
 真哉があからさまに佳奈美から眼を逸らし、明後日の方向を見る。
バファ○ンの半分は優しさで出来ているらしいが、今の真哉は半分どころか一〇〇%怪しさで出来ていた。
「そ、そうだぞ佳奈美。父さんに何も怪しいところはない。家族を疑うなんてよくないことだぞ」
 なおも疑いの目を向け続ける佳奈美を見て、大吾がすかさずフォローを入れる。
「うぅ……でも……」
「その通りだ佳奈美! 見ろ! この澄みきったお父さんの目を!」
「顔をそむけたままじゃ見れないよ! それならこっちを向いてよ!」
「いや、実は寝違えて首が戻らなくてな。困った困った……」
「さっきまで普通に正面向いてたよ……」
 誰が聞いてもバレバレの嘘だが、真哉は「イタイイタイ」などと言って顔をこちらに向けようとしない。どうやら意地でも寝違えたことにするつもりらしい。
 佳奈美はそんな父親をしばし見つめていたが、やがて諦めたようにため息をついた。
「……そうだね。家族を疑うのはよくないもんね」
「おお、佳奈美。わかってくれたか!」
「うん。それよりお父さん。久しぶりに帰って来たんだし、抱っこしてほしいな」
 一転して華やかな笑顔になった佳奈美が、そう言って両手を広げる。
「おお! もちろんだとも!」
 真哉も満面の笑みを浮かべ、佳奈美に向かって両手を広げた。
 ――分厚い書類を持ったまま。
「はい。ありがと、お父さん」
 佳奈美がひょいっとその手から分厚い書類を奪い取る。
「なっ……! 佳奈美、お父さんを騙したのか!? いつからそんな娘になってしまったんだ!!」
「騙したのは悪かった思うけど、何の疑いもなく抱っこしようとしたお父さんもどうかと思うよ……」
 苦笑いを浮かべながら、佳奈美が分厚い書類の表紙を見る。そこに書かれていたのは、

『今週の佳奈美 中学校卒業式特別編(特典DVD付き!)』

「……………………お兄ちゃん?」
「ナニモシリマセン」
「嘘だよ! 『制作・監修 早川大吾』って表紙に書いてあるもん!」
「何っ!? しまった……早川大吾、一生の不覚っ……!」
 拳を握りしめ、本気で悔しそうな顔をする大吾。
 佳奈美が試しに中を見てみると、そこには先週一週間の自分の行動が事細かに記されていた。
 起床時間、就寝時間はもちろんのこと、食事のメニューや部活動の記録、はてにはどうやって調べたのか授業中の様子までもが記載されており、それらの情報が様々な項目別に分類され、わかりやすく整理してある。
 そのあまりの出来栄えに、佳奈美は怒るやら呆れるやら悲しむやら感心するやらで、再び大きなため息をつくほかなかった。
「というか、お兄ちゃん。いつこんなの作ってるの……?」
 ざっと見ただけでも、レポートは優に五十頁を超えている。内容の精緻さをも加味すると、とても一時間や二時間では作れないはずだ。
 佳奈美がそんな風に思って尋ねると、大吾は不思議そうな顔をして、
「ん? 時間ならちゃんとあるだろ?」
「え? いつ?」
「ほら、平日の午前八時三十分から午後三時三十分くらいまで……」
「それは授業中だよ! 授業中は授業をちゃんと聞かなきゃダメだよ!」
「ちゃんと聞いてるぞ? 左耳から入って右耳に抜けている」
「それは聞いてるって言わないんだよ! もう、お父さんからも何か言って!」
 佳奈美が真哉の方を向く。すると、
「……佳奈美の言う通りだ。大吾。お前、最近ちょっとたるんでるんじゃないのか?」
 授業をさぼっていると聞いてはさすがに見過ごせなかったのか、真哉は先程までとは打って変わって真面目な顔になり、口調を厳しくして言った。
「最近、レポートの内容が雑になってきている。リサーチの足りない証拠だ」
「すみません……」
「そうそ……って、お父さん! 注意するところはそこじゃないよ!」
「何? では、DVDの方か? しかし、そっちはまだ確認していないから何とも……」
「そっちでもないよ! 二人とも、学生の本分を何だと思ってるの!?」
「「妹(娘)の観察!!」」
「ああ、もう〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 見事にハモった二人の声に、佳奈美が頭を抱える。
 早川真哉。中肉中背で人のよさそうな顔をした、一見、どこにでもいる普通の中年男性なのだが……やはり彼もまた、どうしようもない親バカなのであった。
「……あなた達、朝から一体何をしているの……?」
 背後から聞こえてきた声に、佳奈美が振り返る。
「あ、お母さん。ごめんね。起こしちゃった?」
「もう起きるところだったから平気よ。それより、すぐに朝ごはんにするから、着替えてリビングに集まりなさい」
「「「はーい」」」
 大吾と佳奈美の母親にして早川家の主――早川奈緒美の言葉に、三人が声を揃えて返事をする。
 こうして、早川家の休日が幕を開けた。


「佳奈美、今日は何か予定があるのか?」
 朝食を済ませ、食器の片付けを終えた大吾が佳奈美に尋ねる。
「うーん……。今日は特に何もないから、家でゆっくりすると思うよ」
 少し考えるような仕草を見せてからそう答える佳奈美。
それを見た大吾は満足そうに頷き、
「そうか。じゃあ、今日は俺も家にいよう」
「じゃあって……もし私が出掛ける予定だったらどうするつもりだったの?」
「もちろんびこ――明日の授業の予習でもするかな」
「今、尾行って言いかけなかった?」
「何のことやら」
 しれっとそう言って、佳奈美から眼を逸らす。
 それを見た佳奈美は困ったような微笑を浮かべた。
「もう、お兄ちゃん……。そんなことしないで、一緒に出かけようよ」
「いや。休日まで佳奈美と一緒に出かけて、俺達の健全な関係が疑われるようなことがあってはならないからな。主に志保に」
「尾行してた方が疑われると思うけど……」
「まぁまぁ、いいじゃないか。それより、これから何をするか考えよう」
 佳奈美が極めて的確なツッコミを入れるが、大吾はそれを華麗にスルーしてウキウキした声で言う。これ以上言っても仕方のないことはわかっていたので、佳奈美も気持ちを切り替えることにした。
「それなら、洗濯をしようよ」
「洗濯?」
 予想外の提案に、大吾が思わず聞き返す。
「うん。お母さんも毎日お仕事大変だから、休日くらいはゆっくり休ませてあげたいもん」
「佳奈美……」
 にっこり笑ってそう言う佳奈美。その全く邪気のない笑顔を見て大吾は、
「ああ! なんて、なんて健気でいい子なんだお前は!」
「わわわっ! お兄ちゃん!」
 感極まったように佳奈美を引き寄せてわしゃわしゃと乱暴に頭をなでる。そのまま抱きついて頬ずりでもし始めそうな勢いだった。
「もう、お兄ちゃん……そんなにしたら髪がぼさぼさになっちゃうよ」
「ああ、すまんすまん。よし。お詫びと言ってはなんだが、俺も洗濯を手伝おう」
「あ、うん。ありがと、お兄ちゃん!」
 お礼の言葉に笑顔で応えて、大吾が佳奈美の背中を押す。そうして、二人は洗濯機の備えられている脱衣所へと向かったのだった。


 手伝う、とは言っても、普段から母親に代わって家事をこなすことが多い佳奈美と違って、大吾は家事に慣れていない。そのため、洗濯機の操作については佳奈美に任せ、大吾は洗い終わった洗濯物を二階に運び、ベランダに干す作業を手伝うこととなった。
「それじゃあお兄ちゃん。今から干す時に注意することを説明するね」
 洗濯籠二つを足元に置き、佳奈美が少し得意げに胸を張る。普段は大吾や志保に色々と教えられることの方が多いので、こうして自分が教える立場に立つことが少しだけ嬉しいのであった。
「お願いします、佳奈美先生」
 その辺りの心境を的確に読み取った大吾が、殊勝に頭を下げる。その気遣いを普段から使えていれば命の危険にさらされる確率もぐっと減るのだが、それに全く気が付かないところが大吾の大吾たる所以なのだった。
「洗濯物を干す時は、シワが残らないように伸ばしてから干すんだよ。まぁ、シワが全く残らないようにする必要はないんだけど、あんまりシワシワだとアイロンを当てるのも大変になっちゃうから。あと、シャツとか上着とかは裏返して干すの。ポケットの中とか縫い目とかが乾きにくいからね」
「ふむ。なるほど」
「それと、お日様の向きと洗濯物を干す順番も考えないと。大きな洗濯物の影になってお日様が当たらなかったりすると、ちゃんと乾かないことがあるんだよ」
「お日様の向きと干す順番だな。よし、わかった」
「じゃあ、私が一度やってみるから、ちゃんと見ててね」
 佳奈美が洗濯籠から湿ったTシャツを一枚取り出し、両肩辺りの部分を持って、仰ぐように上下に振る。
 パンパン、と小気味のいい音が鳴り、しわくちゃだったTシャツがしっかり伸ばされた。
「あとはハンガーにかけて、ベランダの物干し竿に干すんだよ。下着とか靴下とかは洗濯バサミを使うんだ。長ズボンとかバスタオルは干す時に地面に付けないように気を付けて持ってね。汚れちゃうから。わかった?」
「う、うむ。大丈夫……だ?」
 言葉とは裏腹に、語尾が思わず疑問形になる。思いっきり目が泳いでいた。
「あ……一気に説明しすぎちゃったかな? ごめんね、お兄ちゃん……」
 そんな大吾を見て、佳奈美がしゅんとする。
「教えるのが楽しくて、ちょっと浮かれすぎちゃった……。もう一度説明するね?」
「い、いや、大丈夫だ! 問題ない!」 
 先程までとは打って変わった力強い口調で、大吾は佳奈美の言葉を否定した。
 ここでもう一度説明をさせてしまえば、浮かれ過ぎていたのを認めたも同然となってしまう。かわいいかわいいかわいい妹に、そんな悲しい思いをさせるわけにはいかない。
「本当に? 大丈夫?」
 不安そうにそう聞いてくる佳奈美。対して、大吾は不敵な笑みを浮かべて答えた。
「ああ。まず、シワをしっかり伸ばし、お日様の向きと干す順番を考える」
「うんうん」
「伸ばしたらTシャツなどの上着はハンガーにかける。下着や靴下には洗濯バサミを使う。長ズボンやバスタオルは地面に付けない」
「そうそう!」
「そして最後にウガンダの物干し竿に干せば完璧だ!」
「そうそ――って、そんな遠くまで行っちゃダメだよ! すぐそこのベランダだよ!」
 危うく頷きかけた佳奈美が、慌ててツッコミを入れた。
「くっ……もう少しだったのに。惜しかった……」
「お、惜しかったのかなぁ……?」
 悔しげな様子の大吾を見て、佳奈美はいつもの苦笑いを浮かべる。
(でも、気を遣ってくれたんだよね……)
 落ち込みそうになっていた自分を励まそうとしてくれたのだろう。
 兄は普段の行動が派手な分、周囲には大雑把な性格と思われがちなようだが、本当は繊細過ぎるほど細かな気配りが出来る人であることを佳奈美は知っていた。
そして、実は意外と照れ屋で、正面からお礼を言われたりするのが苦手なことも知っている。
 だから、佳奈美はいつものように
(ありがとう。お兄ちゃん……)
 兄の横顔を見つめながら、心の中でそっとそう呟いたのだった。
「よし。やり方はわかったし、早速干していくか」
「うん。それじゃあ、お兄ちゃんはそっちの籠をお願いね」
「おう、任しとけ!」
 佳奈美の言葉に威勢よく答え、大吾が洗濯籠の中に手を突っ込む。そして、勢いよく洗濯物を籠から引き上げた!

 ぴろん

 なんだか、そんな効果音が聞こえた気がした。
 大吾が手にしていたのは、ピンク色で逆三角形の形をした布地。デザインはシンプルだが、所々にあてがわれたフリルがなかなかかわいらしく、男心をくすぐる絶妙な一品だ。
(……ふむ、これは……)
 ここまでの冷静な観察の結果、大吾の頭が一つの結論を弾き出す。
 これは、俗に言うパン――
「わああぁぁぁぁあああ!! な、何見てるのお兄ちゃんっ!?」
 刹那、顔を真っ赤にした佳奈美が飛び掛るようにして大吾の手からパンツを奪い取り、胸に抱え込んだ。そして、大吾に向けて侮蔑のこもった視線を送る。
「あ、いや、これは、その……」
 今更ながら慌て始める大吾。
 まずい。故意ではなかったとはいえ、妹の下着をじっくり凝視するのはどう考えても変態の所業だ。いくら温厚な佳奈美といえど、簡単には許してくれないだろう。
「ち、違うんだ。別にわざと見ようとしたわけじゃなく洗濯籠からたまたま取り出したのがそれだっただけで決してやましい気持ちで見ていたわけではいややましい気持ちが全く無かったといえば嘘になるかもしれないがそれは男としての本能がそうさせるのであってつまりはオスとして子孫を残すというもっとも原始的かつ刹那的な衝動が――」
「お兄ちゃん」
 グダグダ長い上にわかりにくい大吾の言い訳を、佳奈美がぴしゃりと遮る。
「言い訳なんて、男らしくないよ」
「うっ……ほ、本当にすまなかった……」
 珍しく厳しい言葉で責められ、大吾はがっくりとうなだれる。
 佳奈美は「もう……」とため息をつくと、頬を染めながら上目遣いに大吾を見て、一言。

「お兄ちゃんの…………えっち」

「ぐはっ!!」
 そ、その台詞と仕草は反則だ!
「だ、ダメなんだよ。いくら兄妹だからって、女の子の下着をじっくり見るなんて――って、お兄ちゃんっ!? どうして急に両手で鼻をおさえて蹲ってるの!?」
 佳奈美がもう一度しっかり注意しようとする中、大吾は鼻の奥からせり上がってくる赤い衝動と激しい戦いを繰り広げていた。
 危なかった……。あともう少し鼻を摘むのが遅かったら、(不純な)魂ごと天に召されていたかもしれない。
いや、まだ安全とは言い切れない。脳裏に鮮明に刻まれた先程の佳奈美の台詞と表情が消えるまで、この戦いは続くのだろう。
 だが、しかし!
「大丈夫。大丈夫だ。俺は……まだ戦える!」
「な、何と戦ってるのかなぁ……?」
 両手で鼻を摘みながら顔を上げ、目の奥で闘志を燃やす大吾に、佳奈美はわけもわからずそう呟くほかなかった。


 その後、さらに掃除も手伝って、家事は午前中で全て終了。昼食を終え、再びすることがなくなってしまった二人は、大吾の部屋でお茶を飲みながら食後の休憩を取っていた。
「佳奈美、午後はどうする?」
 大吾が部屋の時計を確認しながら尋ねる。
 時刻は午後二時を少し過ぎた辺り。夕食までまだ結構な時間がある。
「午後も特に用事はないけど……。お兄ちゃんは?」
「佳奈美がないなら俺もないぞ!」
「そ、そうなんだ……」
 きっぱり即答する大吾に、佳奈美はお決まりの苦笑いで応ずるほかなかった。
「うんと……それじゃあ、たまにはお兄ちゃんのやりたいことをやろうよ。いつも私がやりたいことをやってるから」
 しばらく考えた後に、佳奈美がそう提案する。
 休日に限らず常に妹最優先思考の兄は、自分に付き合うことは多々あれ、自分を付き合わせることはほとんどない。日頃お世話になっている分、たまには逆の立場になるべきだろう。
 それに、普段から兄は自分の希望をほとんど口にしない。どんな希望を持っているのか、少し興味もあった。
「俺のやりたいこと……か」
 大吾が腕を組み、真剣な表情で考える。そして、
「なら、筋トレをするか」
「ほぇ? 筋トレ?」
 全く予想外の答えに、佳奈美は目を丸くした。
「いやか? 筋トレ」
「ううん。そんなことないけど……」
 大吾の確認に、首を横に振る。
 佳奈美は水泳部に所属しているので、筋トレは嫌いではないし、よほどハードでなければ休日にするのも問題ない。一方、大吾は普段からやっているわけではないだろうし、特に必要があるとも思えない。
 一体、何のために……?
「よし、ならば筋トレだ。まずは腹筋から!」
「う、うん……」
 結局、理由はよくわからないまま、佳奈美は床に足を延ばして寝ころぶ。
 まぁ、いいや。お兄ちゃんなんだか嬉しそうだし、断る理由も特にないしね……。
 そう自分を納得させ、佳奈美は両手を頭の後ろで組むと膝を立てた。
「じゃあ、お兄ちゃん。ちょっと足を押さ――」
 押さえて、と頼もうと上半身を持ち上げた佳奈美の言葉がぴたりと止まる。
 そこで佳奈美が見たものは、
「……お兄ちゃん、何してるの?」
 片膝をつき、嬉々としてデジカメを操作する大吾の姿だった。
「ん? 足なら今押さえるぞ」
「あ、ありがと。って、そうじゃなくて。どうしてデジカメを持ってるの?」
 佳奈美がそう尋ねると、大吾は不思議そうな顔をして、
「なぜって……水泳部は筋トレを更衣室とか室内練習場でやるから、なかなか撮影する機会がないだろ? だから、この機会にしっかりと記録しておかないとな!」
「…………」
「準備完了。さぁ、いつでもいいぞ! さぁ、さぁ、さぁ!!」
 大吾は左手で佳奈美の両足首を押えると、鼻息を荒くしながら右手でデジカメを構える。
 どこからどう見てもいかがわしさ全開であった。
「……やっぱり、下でテレビでも見ようよ」
「な、何ぃっ!? 急にどうしたんだ佳奈美!?」
「なんとなく、今日は筋トレしたくなくなっちゃった……」
「なんだと! くそっ……折角のチャンスだったのに……」
 デジカメを握りしめ、表情に無念さを滲ませる大吾。
 佳奈美はため息をつきながら、今後、更衣室と室内練習場の監視を強化するよう志保に進言することを固く誓うのだった。

(後編に続く)
posted by 稲葉洋樹 at 23:52| Comment(0) | 気ままな短篇集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月14日

アニメ改編期です

 ブログ読者の皆様こんにちは。稲葉洋樹です。

 このところ天気が悪く、気温もなかなか上がりません。気分転換に外で仕事をすることが多い私にはあまり優しくない感じですね。早く春らしくなってもらいたいものです。

 さてさて、この時期はアニメの改編期ですね。私も新しいアイディアを生み出すインスピレーションを得るべく、新しいアニメをなるべくチェックするようにしています。
 まぁ、世間から見ると遊んでいるようにしか見えないかもしれませんが……れっきとした仕事の一環です。ええ、仕事ですとも。マンガを読むのもラノベを読むのも全て仕事です。
 それが幸せかどうかは、人それぞれだと思いますけども。

 私は他の先生方の作品に言及することはなるべく避けるようにしていますが、今期は「響け! ユーフォニアム!」に注目していたりします。なにしろ私、学生時代は吹奏楽部に在籍していたので。ライトノベルでどのように吹奏楽を表現しているのか、原作ともども注目していきたいと思っています。

 ちなみに、アニメは開始30秒でダメ金の話が出てきて、いきなり心の傷を抉られました(涙)
 私も学生時代、何度ダメ金に泣かされたことか……。今となっては良い思い出ですが、当時は辛かった……。
 アニメでは主人公が「本気で全国行けると思ってたの?」なんて言っちゃってましたが、当時、そんなことを言ったら部内で非難轟々だったと思います。内心、そう思っている人はいたかもしれませんが。
 今現在、コンクールに向けて頑張っている吹奏楽部員の皆さんは悔いのないようにして欲しいと思います。

 それでは、本日はこの辺りで。

                                    稲葉洋樹
posted by 稲葉洋樹 at 21:25| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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