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2015年01月22日

一粒のお米には七人の神様が宿るという……

 ブログ読者の皆様こんにちは。稲葉洋樹です。

 タイトルを見て「いきなり何を言い出すんだこいつは……」と思われた方も多いと思いますが……。
 実は福岡のお米をPRする『こめかみっ!』というプロジェクトがありまして、近年、様々な形で多方面に展開されております。
 そして、そのプロジェクトの一環として、『こめかみっ!』のキャラクター達を使ったライトノベルを出版しようという動きがあり、この度、めでたく私の書いた原稿が採用される運びとなりました。

 詳細については今後、告知されると思いますが、創芸社クリア文庫様から4月頃に出版される予定です。
 既にあるキャラクターを使って原稿を書くというのはこれまでとは違った難しさがありましたが、可愛らしいキャラクターばかりだったので、なかなか楽しんで書くことが出来たかなと思います。
 まだ少しだけ時間がありますので、改稿作業を進め、『こめかみっ!』のキャラクター達の魅力が最大限に伝わるような作品にしていきたいです。

 発売日等、具体的なことが決まり次第、このブログでも告知していきたいと思いますので、続報をお待ち下さい。
 それでは、本日はこの辺りで。久々の新刊、頑張るぞ〜!!

追伸:『こめかみっ!』の詳細については以下のサイトでチェックお願いします!
    http://www.komekami.net/index.html


posted by 稲葉洋樹 at 20:12| Comment(2) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月20日

自分を磨く時間?

 ブログ読者の皆様こんにちは。稲葉洋樹です。

 久方ぶりの更新です。前回はいきなりの短編ですみませんでした。
 原稿を書かない時期が続くとどうしても感覚が鈍ってくるので、また機会があれば短編を載せてみようと思います。横書きの上、字が小さいので読みにくいとは思いますが(汗)

 さて、私はこの時期、アルバイトが一段落するため、使える時間が増えます。一緒に仕事が増えてくれればいいのですが、残念ながらそう簡単に増えたりはしないので、他のことに使うしかありません。
 というわけで、しばらくは自分を磨くことに時間を使うしかないなぁ、と考えています。
 勉強したり、ラノベを読んだり、インスピレーションを得るためにたまには遊びに行くのもいいかもしれません。あとは、仕事探しも……。

 正直、なんとも呑気だなぁという感じで、危機感を覚えなくもないのですが、こういう時間がこの先もあるかわかりませんので、いい機会と前向きにとらえることにしましょう。後になって、あの時過ごした時間は無駄ではなかったと思えるように、色々とやってみたいと思います。

 それでは、本日はこの辺りで。

                                         稲葉洋樹
posted by 稲葉洋樹 at 00:10| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月08日

いもうとコンプレックス! 〜入学式前夜の一幕〜

注:この作品は稲葉洋樹のデビュー作である『いもうとコンプレックス!』シリーズの短編になります。同シリーズを未読の方には一部、理解しづらい内容が含まれますが、ご容赦下さいませ。

 入学式を明日に控えた夜、午後一〇時三〇分。
 闇に紛れるような黒のTシャツとジーパンに、やや大きめのリュックサックを背負った早川大吾は、腰に手を当てて五月治学園の校舎を見上げた。
「頬を撫でる柔らかな風、空に浮かぶ美しい満月……妹を愛でるには最高の夜だと思わないか?」
「いや、意味がわからぬ」
 どことなく悦に入ったような大吾の呟きに、隣にいた赤と白の巫女服を着た少女がツッコむ。夜風にたなびく長い銀髪が、月光を反射して淡く幻想的な輝きを放った。
 彼女の名は天日輪姫命――――通称ミコト。自称縁結びの神様で、とある事情から佳奈美の不幸体質を直すのに協力してくれることになっている。
 詳しく話すと長くなるので、その辺りの詳しい事情は『いもうとコンプレックス!』第一巻を参照して欲しい。
「お主、あざとすぎるじゃろ……」
「ん? 何の話だ?」
「いや、まぁよいがの……」
 ミコトは小さく首を振りながら嘆息した。
「して、こんな夜遅くに何をするつもりじゃ?」
「明日からの作戦のための準備をする。放送室に行って書類をすり替えるんだ」
 明日からの作戦とは、佳奈美に友達を作るための策略のことだ。その内容は事前にミコトも聞かされていたので、あえて尋ねはしなかった。
「ふむ……しかし、学校に入るならば何故門の方に行かぬのじゃ?」
 ミコトが首をかしげる。大吾達がいるのは正門とは真逆の校舎の裏側だった。
「正門には監視カメラがあるからな。入るなら裏からだ」
「かんしかめら? なんじゃそれは?」
「あー……まぁ、とにかく表からは入れないんだ。細かいことは気にするな」
 長年、手鏡の神器に封印されていたらしい(本人談)ミコトは現世についての知識に疎い。わざわざ説明するのも面倒なので、大吾は適当に流した。
「むぅ……あしらわれたようで得心いかぬが、まぁよい。それより、ここからどうやって中に入るのじゃ? 塀はかなり高いようじゃが……」
 ミコトの言う通り、五月治学園は周囲を高い塀に取り囲まれている。ジャンプしても到底届かない高さだ。
「わかってる。だから、ここは踏み台を使う」
「ほう。そのような物を持ってきておったのか。準備がいいの」
「ふっ。まぁな」
 余裕の笑みを浮かべて、大吾がミコトを見る。
「……? なんじゃ?」
 首を傾げるミコト。そうして、しばし無言で見つめ合った後、
「お、お主、まさか我を踏み台に使うつもりではあるまいな!?」
 ようやく大吾の視線の意味を悟ったミコトが驚きの声を上げた。
「仕方ないだろ。お前はふわふわ飛んで塀を越えられるかもしれんが、俺には無理なんだ」
「し、しかし、仮にも我は神じゃぞ! それを……」
「ええいうるさい! お前はそこに屈んで『我を踏み台にした!?』とか言っておけばいいんだ!」
「意味がわからぬ!」
 その後もあーでもないこーでもないと無駄な口論を続けた結果、ミコトが肩車をするという折衷案で双方妥協し、大吾達は無事学校の敷地内に潜入を果たした。
「誰かさんのせいで少々予定が遅れたが、まぁよしとしよう」
「我のせいにするでない。して、次はどうするのじゃ?」
「教員室に行って放送室の鍵を確保する。場所は既に把握済みだ」
 さらりと恐ろしいことを言ってのけながら、校舎の裏側から慎重に表に回り、教員室の窓の前に辿り着く。が、
「やはり施錠されているか……」
 当然のことながら、教員室の窓は全て鍵がかかっていた。
「ミコト。確か前に簡単な神通力が使えるって言ってたよな? この窓の鍵を開けられるか?」
 くるりと振り返ってそう尋ねる。
「恐らく出来るとは思うのじゃが……お主、鍵を開ける道具は持っておらぬのか?」
 ミコトは大吾が背負っているリュックサックを指さした。
「一応ガラスをくり抜く道具は持っているが、出来れば犯行の形跡を残したくはないからな。神通力が使えれば一番いいんだが……」
 最早完全に犯罪者の発言であった。
「そうか。じゃが……」
 なおも逡巡するミコト。
「どうした? 何か問題あるのか?」
「……先程から思っておるのじゃが、我らのしていることは悪いことではないのか? 我は悪事の片棒を担ぐのは嫌なのじゃが……」
 不安そうな声で聞いてくるミコト(絶賛不法侵入中)に大吾は、
「何を言う。俺はこの学校の生徒だ。生徒が学校に入る。何の問題もない」
 自信満々にそう断言した。
「そうなのかのぅ……」
「そうなんだよ。第一、俺がミコトを騙すなんて酷いことをするわけがないだろう?」
「つい先程踏まれそうになったのじゃが……」
 ミコトはジト目でツッコみつつ、
「……まぁよい。お主がそこまで言うのなら信じよう」
 人差し指を窓の方に向け、「むんっ」と小さく唸った。同時に、かちりと音が鳴る。
 大吾が窓に手をかけると、抵抗なくすんなりと開いた。
「よっしゃ。でかした共犯者」
「やはり共犯にされておる!?」
 ショックを受けているミコトをスルーし、大吾は窓から教員室に入ると鍵を確保した。
「よし、それじゃ早速放送室に向かうぞ……って、どうしたミコト?」
「もうよいのじゃ……」
 ミコトは床に『の』の字を書いていじけていた。


 ひとしきりミコトを慰めた後、二人は再び放送室を目指して教員室を出た。
「放送室はこの上の五階の丁度反対側にある。一番向こう側の階段を使って行くぞ」
 廊下に出た大吾が右側を指さす。校舎を正面から見ると、一階の左端に教員室、五階の右端に放送室と両者は対角線上に位置している形だ。
「あと少しだ。気を抜くなよ」
 ミコトが「うむ」と頷いたのを確認して、大吾は静かに移動を始める。
 といっても、ここまで来れば作戦は完了したも同然だった。警備員が午後一〇時に帰宅するのは事前のリサーチで確認済みだし、今日は宿直の先生もいない。
 つまり、作戦の障害になるようなものはもう何もない。楽勝だ。
 そう考えながら、大吾が一階中央にある昇降口の前を横切ろうとしたその時、
「えー、全員揃いましたか〜?」
そんな声が聞こえてきた。
「っ……!」
 咄嗟にミコトの腕を引き、下駄箱の影に身を隠す。そして、首だけをにゅっと突き出して声のした方を見た。
 昇降口の出入り口付近に、制服を着た男女二人ずつ、合わせて四人の生徒がいる。リーダーらしき男子生徒が残りの三人に向かって言った。
「それではこれより毎年恒例、オカルト研究部学校の七不思議探索を行いま〜す」
 どうやら四人はオカルト研究部の部員らしい。生徒会に申請が来た覚えはないので、恐らく無許可の活動だろう。
「無断で夜中の学校に侵入して活動するとは……なんて奴らだ」
しかも毎年恒例になっているらしい。一度生徒会できちんと調査しなければ。
「ああいうのがいると本当困るぜ。なぁミコト……って、なんだその目は?」
 同意を求めてミコトを見ると、なぜかこちらにジト目を向けてきていた。
「……なんでもないぞい」
ミコトが力なく首を振る。その声は、どうしてかとても疲れ切っているように聞こえた。
(まぁいい。それよりも問題は……)
 このまま七不思議探索とやらを続けられてはやっかいだ。見つかりたくないのはこちらも同じ。四人にはどうにかすみやかにご退場願いたいが……。
「まずはトイレの菜々子さんを見ようと思います。この話は……」
 恐らく部長であろう男子生徒が他の部員三人に詳細を説明している。やめる気配は全くない。
「どうするのじゃ?」
 ミコトが小声で大吾に尋ねる。ミコトの声は大吾にしか聞こえないので別に小声である必要はないのだが、なんとなく場の雰囲気に合わせてしまったのだろう。
「……こうなったら仕方がないな」
 そう言って、大吾は元来た道を引き返し始めた。
「一体何をしようというのじゃ?」
 不思議そうな顔で問うミコト。
 大吾は口の端をつり上げて答えた。
「お望み通り、奴らに恐怖の記憶を刻んでやるんだよ」


オカルト研究部の部員達より先に、二人は五階の女子トイレの前までやって来た。
「よく聞けミコト。今からトイレの菜々子さんを完全再現する」
「そのといれのななこさんというのはなんなのじゃ?」
頭上に疑問符を浮かべるミコトに、大吾は腰に手を当てて解説する。
「トイレの菜々子さんはこの学校に伝わる怪談話の一つだ。今から三〇年ほど前に菜々子という生まれつき足の悪い女子生徒がいた。真冬のある日、遅くまで図書室に残っていた彼女が帰りにトイレに寄ったところ、鍵が壊れて出られなくなってしまったらしい。足の悪い彼女は自力で外に出られず、誰にも見つからぬままトイレで夜を過ごし、そのまま凍死してしまったそうだ。それ以来、夜になると五階女子トイレの一番奥の個室に鍵がかかり、中から助けを求める菜々子さんの声が聞こえてくるんだと」
 学校のトイレにはつきものの怪談話で、十中の八九は作り話だろうが、もし実話だとしたらなんともかわいそうな話だ。
「というわけで、ミコトには菜々子さん役をやってもらう。トイレの一番奥の個室に入って……」
 大吾が作戦の詳細を説明しようとすると、
「いいいいいい嫌じゃ!」
 ミコトにすげなく拒絶されてしまった。
「え? なんで?」
「わ、我は神じゃからな。幽霊の役などお断りじゃ。やるならお主がやればよい!」
「いや、男の俺が菜々子さんをやるのは無理があるだろ……」
「そ、それは……とにかく、嫌なものは嫌なのじゃ!」
 頑なに菜々子さん役を拒むミコト。その身体は……なぜか小刻みに震えていた。
「……なぁ、もしかして怖いのか……?」
 大吾が遠慮がちに尋ねると、
「そそそそんにゃはじゅにゃかりょう!」
 意地っ張りな(自称)神様だった。
「……まぁ、なんだ。何かあったら駆けつけられるよう俺も近くにいるからさ」
 ぽんぽんとミコトの背中を叩いて励ます。
「ほ、本当じゃな!? 嘘ついたら針一千万本飲ますからの!?」
「鬼だなお前……」
 千本でも十分鬼だけど。
「んじゃ、一番奥の個室に入って鍵をかけてくれ。連中が来たら助けを呼ぶ声を出すんだ」
「うぅ……なぜ我がこんな目に……」
大吾に促され、ミコトは涙目になりながら女子トイレに入っていった。
 うーむ……あの調子では演技は期待薄だな。次の手も考えておいた方がいいかもしれない。 そんなことを思いながら、大吾も廊下の柱の影に移動する。そして五分ほど待つと、廊下の奥からオカルト研究部の四人が談笑しながらやって来た。夜の学校を怖がっている感じは全くない。こういう雰囲気には慣れているということか。となると、ミコトにはさらに荷が重い役目になるな。
 などと思っていると、
「タスケテ……」
 トイレの中からかすれた女の声が聞こえてきた。背筋が寒くなるような不気味な声だ。
「おい、今……」
「声が……」
 トイレの前でオカルト研究部の連中が怯えている。そこでさらに、
「タス……ケテ……!」
 先程よりもさらにはっきりと女の声が!
「「「「ぎゃぁぁぁぁあああああ!!」」」」
四人は一目散に逃げ出していった。
 無理もない。相手がミコトだと知らなければ、大吾も逃げ出していたかもしれない。それくらい迫真の演技だった。
「ミコトよくやった。もういいぞ」
 トイレの前まで行って中に呼びかける。すぐさま怯えきった表情のミコトが出てきた。
「も、もうよいのか……?」
「ああ、上出来だ。連中が戻ってくる前にさっさと済ませよう」
トイレの前から放送室に移動し、拝借しておいた鍵を使って中に入る。そして、『入学式関係書類』と書かれたA4サイズの茶封筒の中身を偽造した書類と入れ替え、封筒を再度封じた。後は本物を持ち帰って処分してしまえば、証拠は何一つ残らない。
「完璧だな……くくく……はーっはっはっはっは……!」
 自らの手際の良さ(犯罪行為)にほれぼれしながら、真っ暗な放送室で一人高笑いをする大吾(主人公)だった。
「お、終わったのじゃな? ならば早くここを立ち去るのじゃ」
 そう言ってミコトが大吾を急かす。すっかり夜の学校が苦手になってしまったようだ。
「わかったわかった。ったく、さっきは結構ノリノリで演技してたってのに」
 リュックサックを背負いながら苦笑する大吾。が、ここでミコトがとんでもないことを言った。
「さっき……? 何のことじゃ?」
「……え?」
 大吾の背中に嫌な汗が伝う。
「いや、さっきトイレでタスケテって言っただろ?」
「い、いや、我は、その……め、目をつぶって耳を塞いでおったゆえ……」
 バツが悪そうにするミコト。結局、怖くて演技どころではなかったらしい。
「でも、さっき声が――」
 そこまで言って、大吾は気付いた。気付いてしまった。
 ミコトの声は大吾にしか聞こえないのだ。
 じゃあ、さっきの声は……?
 二人は無言で互いに顔を見合わせた。


 再び女子トイレ前。
「ほほほ本当に行くのか……?」
 ミコトが震える声で尋ねる。
「し、仕方ないだろ……万が一誰かが残ってたら困るし……」
「じゃ、じゃが……」
 ミコトが思い留まるよう説得しようとすると、
「タスケテ……」
 中からはっきりと女の声がした。
「ひぃぃいいいい!!」
悲鳴を上げて大吾にしがみつくミコト。正直、大吾も危うく悲鳴を上げるところだった。
「い、行くぞ……!」
 自分を鼓舞するように声を出して、女子トイレの中に入る。本来なら入ってはいけないのだが、そんな常識はもう頭から完全に飛んでいた。
 ゆっくり歩を進め、一番奥の個室の前に立つ。誰もいないはずなのに、何故か鍵がかかっていた。
(マ、マジかよ……)
 怪談によれば、ドアを二回ノックして「誰かいますか」と声をかけると菜々子さんの声が聞こえてくるらしい。
 大吾は震える手でドアを二度ノックした。
「だ、誰かいますか……?」
 びびりまくった情けない声でそう尋ねる。
 すると……
「サムイ……サムイさムイサむイコワいコワイイヤいヤイヤイやタスけテたスケテタたすタスケてタスけテ……!!」
 おぞましい声と共に、ドアが狂ったように叩かれ始めた!
「「ぎゃああああぁっぁぁぁああああ!!」」
 今度こそ、大吾も一緒に悲鳴を上げてしまった。
「ににに逃げるのじゃ! ここにいては呪われてしまうぞい!」
 ミコトがマジ泣きしながら大吾の腕を引く。その間もおぞましい声とドアを叩く音はずっと続いていた。
 もちろん大吾も怖い。マジで怖い。今すぐにでもここから逃げ出したい。
 …………でも。
 助けを求めるその声は、悲痛で、切実で。
 とても目を背けることなんて出来なかった。
 こんな暗くて寒い場所に置き去りにされて、一人孤独に、誰に看取られることもなく。それはどんなに辛いことだったろう。
 今ここで逃げ出せば、これからも彼女はこの学校でずっと一人だ。永遠に孤独だ。
 そんなの……許していいわけがない!
 大吾は一つ大きく深呼吸をしてから、芯の通った力強い声で言った。
「わかった。今、助けてやるからな」
 とりあえず鍵をいじってみるが、開けられそうもない。だったら……!
 大吾は数歩下がると、助走をつけて肩からドアに突進した。
「つぅっ……!」
 ドアはびくともせず、痛みだけが残る。それでも、大吾はもう一度突進を試みた。
 何度でも。何度でも。
「……お主……」
 いつの間にかおぞましい声は止み、辺りにはただ大吾がドアにぶつかる音だけが響く。
 絶対に諦めない。諦めてたまるか。
 嫌なんだ。誰かが孤独に悲しむ姿はもう見たくない。
 絶対に……助けてみせる!
「うおぉぉおおおお!!」
 雄叫びを上げ、大吾はドア目がけて何度目かわからぬ突進をした。
 バァン!
 ついにドアがこじ開けられる。痛む肩を押さえながら、大吾は個室の中を見た。
 中には誰もいなかった。何の変哲もない普通のトイレだ。しかし、
「ミコト……ここにいるのか?」
 大吾は背後にいる自称神様に問いかけた。
「……うむ」
 ミコトが大吾の横を通って個室の中に入る。そして、誰もいないその空間に静かに語りかけた。
「すまんの。本来ならばお主をあるべき場所へ導いてやるべきなのじゃが、今の我にはその力がない。じゃが、臆することはない。安心して逝くが良い」
 そう言って、ミコトはそこにいる何かを受け入れるように両手を広げた。
「お主はもう、一人ではないのじゃからな」
その瞬間、
「うおっ……!」
 突然、個室の中に小さなつむじ風が巻き起こった。それはほんの一瞬で、あっという間に四散して消えていく。
 そして、その全てが消えてしまう間際、
「……ありがとう」
 風に乗って、そんな言葉が聞こえたような気がした。


 その後、二人が自宅に戻った頃には既に夜中の〇時を回ろうとしていた。
「色々あったが……何はともあれ無事作戦完了だな」
 自室に戻って満足そうに言う大吾。ミコトも「うむ」と頷く。
「とはいえ、これはまだ準備段階に過ぎぬ。明日からが本番じゃぞ?」
「ああ。もちろんわかってるよ」
 大吾はベッドに腰を下ろすと、両手を顔の前で組み、
「明日からの作戦も必ず成功させる。そして佳奈美の体質を直し、佳奈美に憑依してるお前の妹も助け出してみせる……必ずだ」
 静かな、それでいて確かな力強さを感じさせる口調でそう宣言した。
「……うむ。我も出来る限りの協力はしよう」
 ミコトもそれに同調する。
 二人はどちらからともなく見つめ合い、小さく笑みを交わした。
「さて、そんじゃ寝るか」
「そうじゃの。もうくたくたじゃ。ところで、先程から気になっておったのじゃが、その机の上にある紙束はなんなのじゃ?」
「ああ。これはビラだ。次の作戦に使――」
 ミコトに見せてやろうと紙束の一番上をめくった大吾の手が、ピタリと止まった。
「……? どうかしたのかの?」
「……間違えた」
「間違えた? 何をじゃ?」
「さっき入れ替えたのはビラの方だ。こっちが偽造した書類だった……!」
「な、なんじゃとっ!?」
 ミコトは悲鳴のような声を上げた。
「「………………」」
 しばしの沈黙。そして、
「……行くぞ、ミコト」
「い、行く……どこにじゃ……?」
「学校に決まってるだろうが!」
 大吾は再びリュックサックを背負った。
「い、嫌じゃ! 我はもう休みたい!」
「わがままを言うな! ミコト(踏み台)がいないと校内に入れないだろうが!」
「ミコトと書いて踏み台と読むでない! これ、よさぬか! 引っ張るでない、引き摺るでない! こ、こ、この鬼畜外道罰当たりドシスコンめがぁぁぁあああ!!」
 月だけが二人を見下ろす静かな夜道に、ミコトの慟哭が虚しく響いた。

                                            (終)

いもうとコンプレックス!―IC― 富士見ファンタジア文庫 -
いもうとコンプレックス!―IC― 富士見ファンタジア文庫 -
posted by 稲葉洋樹 at 23:47| Comment(0) | 気ままな短篇集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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